学生諸君へ
「これから あなたの生きるみち」 伊藤 明
(構成)
- 書こうと思い立った動機 ”迷える小羊”の群れ
- 現在の世界の分析 ”弱肉強食”の生存競争
- これからすべきこと ”生き残り”をかけた戦略
- 書こうと思い立った動機
”迷える小羊”の群れ
近頃の世界は、大きな変革時期にさしかかっていると思います。そこでは、従来の社会システムやそれに伴う価値観が’ゆらぎ’はじめ、人々を不安にさせてしまうのではないでしょうか。特にこれから世の中へ飛び立とうとする若者は、今まで以上に、どうしていいのかわからず’戸惑い’のなかで焦り’もがき’苦しむのでしょう。
最近、”これからの生きる道”について個人的に思う事があり、特に学生諸君に何らかの参考になればと思い立ち、私が思う考えについて書くことにしました。
これはあくまで私個人の考えであり、絶対的な’正解’でないことを最初におことわりします。また、E-MAILの特徴である’気軽な’コミュニケーションの特性を生かし、この文書をお読み頂いた方々からご意見を頂戴すれば、この内容に反映したいと思っております。
- 現在の世界の分析
”弱肉強食”の生存競争
これから進むべき道について考えるときには、まずは正しい現状分析が必要と思います。私の思う現代社会のイメージをあげると、
- 世界経済での日本の競争能力
- 従来の安い品物を作り世界で競争するスタイルは限界
- 人件費の高騰(発展途上国への工場進出)
- 日本は鉱物資源がない
(人間の”頭脳資源”しか,世界との競争で生き残る道はない。)
- 世界規模の事業
- 世界的な’すみわけ’
システムが複雑化・巨大化
→ 国際的な分業体制へシフト(例:半導体メモリの外国企業との共同開発)
- 成長経済から縮小経済への転換
社会が’成熟’してくると、従来の発展・拡大形から現状維持へシフト。
近年の世界的な経済不況
- 中小企業の自律の必要性
縮小経済下では、従来の親会社からの仕事の受注が減少。会社存続の不安定性増。独自技術による自律が必要不可欠。
- 様々な自動化システムによる労働者の不必要化
コンピュータシステムの発展などによる自動化は、人手を不要とするために労働者の仕事を奪う。人間の仕事は、”物作り”から製造機器の”メンテナンス(維持・管理)”へシフト。失業者の増大。
- 勉強ができる学生が企業の就職面接で不合格になることが意外と多い
学習塾などで指示をもらいながら勉強ができるようになっても、それはかならざずしも本人の実力でない。学校の成績が良ければ、企業で仕事ができるという保証はない。例えば、成績優秀な学生でも企業面接で何度も不合格になることがある。企業の望む人間は、現在の学校の’ものさし’でかならざずしも正しく評価されていない。
全体的に、より厳しい”弱肉強食”時代の到来
石器時代などの食べ物があるかないかなどの‘生物的’な生き残りでなく、食べ物を購入するための賃金を得ることが出来るかどうかの‘経済的’な生き残りが求められる時代。
- これからすべきこと
”生き残り”をかけた戦略
- 知識と知恵の両立
定義
知識:過去に明らかにされた情報の集積
知恵:未知の事象に対しどのように振る舞うべきかを決める能力
現状
学校:知識に比重大
企業:儲ける、生き残るための企業戦略不可欠 → 知恵が必須
今後
先生:知識+知恵 の伝達。物の考え方、取り組む姿勢を自分自身の姿を通し伝える。学術研究重視から実際的分野への積極的参加。
企業:学校に埋もれている知識の発掘。現場の要求の学校側への情報発信。
→ 企業と学校の交流。産学(産業⇔学校)交流の必要性大!!
- プライドを持つ人間
競争相手は全世界。その分野では世界のナンバー・ワンをめざす気持ちが絶対必要!!
’ここまででいい’はダメ!! 常に向上心。
絶対これなら自分は他人に負けないという物を必ず持とうとする姿勢。
→ 学生がプライドを持つには、まず先生自身がプライドを持つ!
(子供は大人の‘鏡’)
- 世界的な競争で生き残れる技術開発の絶対的な必要性
知恵を持った若者による技術開発。”指示待ち人間”ではなく、自分で考えられる人間。”自律思考・歩行”人間の育成。
今後、中小企業でも技術開発指向に目を向け、”生き残り”をかけた先行投資が必要。一方教官は、学生へのそのような考え方を伝えなければならない。”中小企業だからこそ頑張りがいがある!”