平成11年度 卒業研究概要 (黒本 紗稚)
電気二重層コンデンサを用いた太陽電池の応用に関する研究
黒本 紗稚
Study on combination of an electric double layer capacitor used to a solar cell system
Sachi Kuromoto
1. 緒論
太陽電池を用いた電源システムには、二次電池として鉛蓄電池等の蓄電池が用いられているが、鉛蓄電池には問題点が多く、実用化には程遠い段階にある。
そこで本研究では蓄電池の代替品として電気二重層コンデンサを検討し、太陽電池と組み合わせることで、環境に優しく理想的に永久寿命の電源システムを作ることが可能であると考えた。
2.原理
○電気二重層コンデンサとは
電気二重層コンデンサとは、コンデンサにおける誘電体の代わりに電気二重層を誘電体として利用したもの。電気二重層は、1879年にヘルムホルツにより提唱された現象で、固体と液体など、二つの異なる層が接触すると、その界面にプラスとマイナスの電荷が分子レベルの距離を隔てて存在する状態をいう。電気二重層は平方センチメートル当たり、数十[μF]だが、数千[m2/g]ほどの構造を持つ活性炭を電極として用いることにより、数百から数千ファラドのきわめて大きな容量を得ることが可能。
○電気二重層コンデンサの特徴
・急速大電流充放電が可能
・繰り返し放電に強い
・出力(パワー)密度が大きい
・充放電効率が高い
・重金属を含まず環境に優しい
・ 外部短絡しても故障しない
○太陽電池
太陽電池は太陽エネルギーを直接電気エネルギーに変えることができる半導体素子である。電池といっても、電気エネルギーを貯蔵する機能をもっているわけではなく、太陽エネルギーが当たっている間発電する素子である。通常半導体のp-n接合からできており、表面には電気を集めるための+(プラス)の電極と、太陽エネルギーを集める為の反射防止膜があり、その裏面が−(マイナス)の電極になっている。今、太陽電池に太陽光が当たると、太陽電池の内部に電子と正孔ができる。これらは接合部の電界に引き付けられ、電子はn領域へ、正孔はp領域に流入し、両端が導線で結ばれていれば電流が流れることになる。このとき、電球等の負荷が接続されていれば電球が灯り、これは太陽電池から電力を供給していることを意味する。3)
3.実験
○定電圧源回路作成、出力測定
・電気二重層コンデンサ0.1[F]−8個使用
電気二重層コンデンサは直列2個つないだもの(0.05[F])を1個の素子として用いる。
電気二重層コンデンサはあらかじめ8Vに充電しておくこととする。測定は12bit−AD変換ボードを使用しパソコン(NEC98、MS-DOS)へデータ保存する。測定間隔は25[ms]、測定時間は、スイッチによる切り換えがない場合は2分30秒、あとはコンデンサを1つ増やすたびに2分30秒ずつ増やし、3個並列で10分間となるようにする。
・RL:220[Ω]
・MOS-FET:2SK241
4.使用機器
◎ボルセットソーラーVSS-1540:多結晶Si
・最大出力−0.57W
◎UNI-Solar USF-11:アモルファスSi
・最大出力−10W
◎Solarex SX-10:多結晶Si
・最大出力−10W
◎スーパーキャパシタ (NEC)
・Max−5.5V ・容量−公称0.1F
◎AD12−16S(98)H
NECパーソナルコンピュータPC-9800/FC-9800用インテリジェント型アナログ・デジタル変換モジュール
6.結論
研究開始当初予想していたものとは異なる結果となったが、大きく電圧値が落ちることを無視すれば、一定電圧を出す、ということにおいては回路は成功ではないかと思う。スイッチをもっと増やし充電済みコンデンサを新たに追加する、待機コンデンサの数を増やす、などすれば一定値をもっと長い時間保てるのではないかと思う。また、今回スイッチに使用したFETは1種類のみのため、よりこのような回路のスイッチングに適したMOS-FETがある可能性はおおいにあり、適切な素子を見つけることができれば出力値を上げることも可能であろうと考える。また、今回行った実験は縮小モデルであるので、規模を大きくすれば有能な定電圧源となるとしての可能性は示すことができたと思う。
7.参考文献
1)新山信一郎、仲村宏一、山城迪(北見工業大学)・三井克司、山岸政章、岡村廸夫((株)パワーシステム):「電気二重層コンデンサを用いたPV−ECSシステムの開発 (1)」:電気学会全国大会:1998年
2)岡村廸夫:「電気二重層キャパシタ蓄電システム」:日刊工業新聞社:東京都:1999年:P.1〜P.6
3)谷辰夫、田中忠良:「サイエンスシリーズ 太陽と賢くつきあう太陽生活入門」:株式会社パワー社:東京都:1992年:P.111〜P.121
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