(熱平衡;n形半導体の場合)
次に、不純物を含んだ外因性半導体の中のキャリアについて、考えてみましょう。 ここでは、n形半導体を例として上げて考えてみます。 全く同じことは、電子と正孔を入れ換えれば、p形半導体についても言えます。
不純物を加える前から、半導体の中には熱エネルギーによる等しい密度の電子と正孔が存在します。 その真性キャリア密度をniと表すことにします。
n形半導体の場合、不純物として�族原子(ドナー)を半導体に混ぜます。 半導体原子との結合に関係しない’第5番目’の電子は、熱エネルギーによって�族原子核からの緩やかな束縛から離れ、自由電子として振る舞います。
Point!
n形半導体も不純物を混ぜる前は、真性半導体!
つまり、
n形半導体も不純物を混ぜる前は、電子と正孔が真性キャリア密度だけごくわずかに同じ量だけ存在する。
�族元素から電子を非常にたくさん供給されると、多数存在するキャリア(多数キャリア)は、電子となります。 一方、小数しか存在しないキャリア(小数キャリア)は、正孔となります。 真性半導体の中では、電子と正孔は全く同じ量だけしか存在しませんので、どちらかが一方に比べて多数といったことはありません。
n形半導体の中に、正孔が存在することは理解してもらえたと思いますが、その密度は、真性半導体に比べて同じではなく、減少してしまいます。 その密度は、次のような関係を満たすことがわかっています。 これを、質量作用の法則と呼びます。
(n形半導体中の電子密度)×(n形半導体中の正孔密度)=(真性半導体中の電子密度)×(真性半導体中の正孔密度)=ni×ni
つりあいがとれることを、平衡(へいこう)と呼びます。 熱エネルギーで、反応式が右向きに進むか左向きに進むかのつりあいがとれることを、熱平衡と呼んでいます。