(高温になると、n形半導体でなくなる!)

  半導体が使いものになるためには、p形とn形、言いかえると、正孔か電子が多数キャリアとして存在することが必要です。 ここで、もう一度復習すると、

Point!
  n形半導体:電子密度が正孔密度に比べて大きなもの(多数キャリアが電子)
  p形半導体:正孔密度が電子密度に比べて大きなもの(多数キャリアが正孔)

n形半導体中には、通常電子が多数存在します。 ここで、’通常’とは、ふだん私達が使う温度(人間が生活している気温程度)のことを言います。 もっと高温になるとどうなるのでしょうか。

Point!
  (n形半導体の電子密度)=(ドナー不純物原子密度)+(真性キャリア密度)

真性キャリアとは、熱エネルギーによって原子の結合が切れて生じた電子のことを言うのでしたね。 この真性キャリア密度は、室温程度ではほとんど無視できるほど小さいのですが、先に述べたように、温度が非常に高くなると、つまり数百度の温度になると、不純物から供給される電子と同程度かそれ以上になってきます。 その時、室温で小数キャリア密度であった正孔は、真性キャリア密度に等しくなります。 と言うことは、……。 つまり、

Point!
  ドナー不純物をわざと混ぜて、n形半導体として使いたかったものでも、非常に温度を高くすると、電子と正孔が同じだけたくさんできる!

  このようなことが起きる温度では、p形半導体でも同様のことが生じます。 p形半導体も、非常に高温になると、電子と正孔が熱エネルギーによって同じ量だけたくさん生じます。

  これまでの話から、半導体を高温にするとどのようなことが起きるかを見てみると、

  <室温>

p形半導体の中 正孔が電子に比べて圧倒的に多い
n形半導体の中 電子が正孔に比べて圧倒的に多い
p形とn形を接合させると、正孔と電子がそれぞれ多い領域が形成できる。
ダイオードやトランジスタなどの素子が正常に動作し、コンピュータなどが使用できる。

  <高温>

p形半導体の中 熱エネルギーによって非常に多くの電子と正孔が同じ程度の量できる。 多数キャリアと小数キャリアの区別がなくなる。
n形半導体の中 p形半導体と同様。 多数キャリアと小数キャリアの区別がなくなる。
p形とn形を接合させても、既にp形、n形と区別できない二つのものを接合しただけになる。
ダイオードなどが正常に働かず、コンピュータが思ったように動かない。 いわゆる、”暴走”状態になってしまう! 熱を加えたことによる温度上昇が原因な為に、”熱暴走”と呼ばれたりする。

  CPUが熱くなりすぎるのを防がないと、上のような”熱暴走”を生じてしまい、リセットスイッチのお世話になることになってしまうのです。 パソコンの中でいつも”風車”が回っているのは、CPUを空冷するためなのです。 改造パソコンは、CPUが熱くなりすぎるので、さらに水冷装置が必要なのです。 くれぐれも、改造によってデータ、ソフトウエア、ハードウエアが壊れてもそれは自分の責任だということを、肝に命じておいて下さい。

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