(さらに奥の手: 平屋建てから2階建てへ)

  現在、私達が利用している集積回路上の電気配線は、2次元的です。 つまり、x軸とy軸、(縦と横方向)の二つの方向だけを利用しています。 すぐ隣の場所に行きたいのだけれど、“まわり道”が必要な時もあります。 以前、電気配線を、上方向にも行う多層配線技術について非常に関心が集まりました。 結局、当初期待されたような華々しい成果はあがらなかったようですが、研究は継続してなされています。

  3次元的に、z軸(上方向)へも配線をできるようになると、配線は‘ぐっと’短くて済むようになります。 電子が走る距離が短くて済むことになりますから、信号を送るのにかかる時間が短縮でき高速化にも大きく貢献します。 電気的には、動作周波数が高く配線が長くなると、コイル(L)やコンデンサ(C)として働き始めてしまい設計通りに動作してくれなくなってしまいます。 配線の短縮は、このような寄生素子の低減にも不可欠です。

  多層配線技術では、第一層の電気配線の上に絶縁体で分離した第二層を形成します。 但し、上下の層で電気的に接続したいところでは、部分的に電気が流れるようにしておきます。 このような層を、必要に応じてたくさん重ねるといったアイデアでした。 その発想は非常に面白いと思うのですが、今までの技術では、これがとても難しく完全な形で実現していません。 実際に半導体集積回路作成プロセスを通過した半導体表面は、平坦ではなく、‘うねって’います。 この上に、髪の毛の太さの約100分の一の正確さで、写真技術で回路パターンを正確に転写することが難しいのです。

  いつかこの問題が解決されれば、現在の‘平屋建て’である半導体の電気配線が、‘3階建て’‘4階建て’の時代を迎えることと思います。

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